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「子育てとすまいの間取り」 田中郁恵

私は郊外のマンションで育ちました。いわゆるファミリー世帯用の間取りで4LDK。3つ上の姉がいますが、小学生の頃までは同じ部屋でした。いつの頃からだったか、真ん中に2段ベットを置いてその両側をそれぞれのスペースとして使うように。

間取り

日当りが良い窓側のほうがいいな、、こっちの部屋は扉から近いので何だか嫌だな、ベットは1階のほうがなんとなく落ち着くな、こっちのほうが少し面積が広いな、そんなかんじで分割された空間の良し悪しを子供なりに天秤にかけて選んでいたように思います。姉が受験勉強をする時期に、ようやく私たち姉妹に個室が与えられました。自分だけの閉じられたスペースが持てたのが嬉しかったのは覚えています。私だけの空間。なんとなく大人になった気分になったような気もしました。みなさん、似たような経験があるんじゃないでしょうか。

家を新築、もしくはリフォームを考えているご家族にとって、(とりわけ、小さな子供がいる、もしくはもつ予定のご夫妻の場合)子供部屋はどうするか、まだ数年先のことだとしても、やはりまず考えるべきことなんだろうなと思います。実際、打ち合わせでは必ずといっていいほど話題にでてきますし、私にとってはそれぞれの家庭の子育て観を垣間見ることもできて興味深いことでもあります。

まだ年齢が小さい間には親と一緒に作業できるカウンターをつくってほしい、一人で遊んでいる時も目が届くようになるべくキッチンやリビングの近くに子供が遊んでおけるスペースを。いずれは個室を与えたいので部屋は必要。今は子供が一人だから部屋は1つでいいけど、2人目の子供ができたらどうしようか、、大きめの個室を用意してゆくゆくは家具で仕切れる程度で考えます。個室は必要ありません、部屋に閉じこもらないようにしたいので…。子供が毎日家族とコミュニケーションをとれるよう、リビングを通ってから子供部屋があるようにしてください、など様々です。けれど、これからどんな風に成長していくかわからない子供のこと、また、その子供と家族の関係に明解なビジョンをもつことはなかなか難しいことだと思います。

 

昔、私が担当していたお家に数年後、あそびに伺ったときのことです。可愛い女の子が出迎えてくれました。打ち合わせ当時にはまだお腹の中にいたお子さんです。もちろん家全体もすっかり馴染んで良い雰囲気がでていたのですが、リビングとひと続きになっている一角に、彼女の可愛らしい洋服と私物がところ狭しと並んでいました。更にそこから1階へとつながる吹き抜けには彼女が書いた絵や作品がディスプレイされていてそれがまた素敵。どうやらそこが彼女の部屋のようです。確か打ち合わせの時には、そこは年に数回お客さんが来た時などの「なんでも」スペースとしてを予定していて、実際、引っ越し後1年目にお邪魔した時にはそんなふうに使われていました。子供部屋はというと、リビングとは離れた別の場所に個室を準備してあったのですが、彼女自身が家族と離れたところにいるよりも、みんながいるリビングの近くに自分の場所があるほうが良かったみたいです。客人としてもリビングに子供のものがあふれてきているその様子は家族の雰囲気も伝わってきてなかなか良いなと思いました。その後、彼女には妹か弟ができているはずなので、、さてさて今はどんな風に変化しているのか、また訪ねる日が楽しみです。

 

「どうにでもなるように。」というと無責任に聞こえるかもしれませんが、○○部屋がいくつ必要ということよりも、家族が「どんなふうに展開しても良いように」少し曖昧な空間が残されているって案外大事なことなんだと感じます。そして、予期していなかったこと合わせて変化していく空間というのは、どう成長していくかわからない子どもと同じできっと豊かで面白いことなんだろうな、そんなふうに思います。

 

 

 

 

 

ごあいさつ

普段は住まいや家具などのデザインを仕事にしています。 もともと旅行が好きなこともありますが、この仕事をはじめてからは、海外国内かかわらず興味のあるまちや建築があるところには可能な限り足を運ぶようにしています。 どちらかというと一般的な観光地からそれた、現地の人々の生活がわかるような街や集落を訪ねることが多いです。 また、飛行機、列車、バス、自転車、足…それぞれ移動スピードがかわると見えてくる発見の種類も違って面白いので、移動中も楽しい時間です。 そういった経験や日常の生活の中で、面白い見え方をする材料の使い方、開口部のとりかた、などささいなヒントを見つけて、デザインに生かすことを心がけています。 一般のかたにとっては家つくりというのは一生に一度あるかないかという大イベント、費用も桁違いにかかってしまうのでなかなか敷居が高いことのように感じられますが、毎日長い時間を過ごすもっとも身近な居場所。ちょっとした工夫で空間が何倍にも豊かになれるようなデザインを提案することを心がけています。

 

 

プロフィール

田中 郁恵           HP:http://t-ikue.com/

■経歴

関西大学建築学科卒業後、同大学大学院工学研究科にて都市設計学を専攻。

大学院修了後、京都のアトリエ系の設計事務所にて8年間勤務、主に住宅設計などの仕事に携わり、その後、田中郁恵設計室を主宰。 住まい、店舗、家具、外構、など空間にかかわるデザインをしています。

■資格 一級建築士

 

 


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