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行きし帰りし物語 うえおか 裕

はじめてのおつかい

幼い人たちとお話を楽しむとき、どんな本を気に入ってくれるかと本選びが一番エネルギーの注ぐ作業です。

 

基本的には、おうちでお母さんのお膝の上で聞くお話はどんなお話でもうれしいものです。お母さんの声が柔らかく音楽のように流れるのですから。

 

けれども、物語(ストーリー)が子どもたちをお話の世界に誘ってくれるのですから、その物語が目の前の子どもにとって滑らかに理解しやすいものであることは大切です。おとうさんやおかあさんの云うことはわかっているのに、まだ 発語に至らない人たちこそ物語の筋立て・ストーリーがはっきりしたものを読んでもらうべきです。

 

まず最初に「ママ」「まんま」などの一語文、それから「ママ、きた」「ワンワン、いた」の二語文、この時のこどもたちが絵本の文章に出会えば、今すぐは 使わなくても文章の流れ、リズムを身体にしみこませることが出来ます。それまでに、聞くことで十分に理解できるほどの言語力を備えているのですから。

 

今までのように生活の中で「聞こえる」音を捕まえてきた力を、今度は 絵本を読んでもらうことで「聴く」集中力を喚起するのです。

 

 

瀬田貞二さんという児童文学者がいます。瀬田さんは『幼いの文学』という本の中で、「行きし帰りし物語」という言葉を使われています。

 

つまり、安心の場所からあるきっかけで冒険に出かけて行き何らかの経験をして安心の場所に帰ってくることの読書体験は子どもたちに豊かな経験となって心に染み入るのです。子どもたちは主人公と自分を同一化させ物語を味わいます。文章とそれを程よく補う絵が彼らの想像力を存分に活性化します。

 

ここでいう「冒険」は、龍退治でも荒海への船出でもありません。お母さんと一緒に公園に出かけ、お母さんの気が付かないうちに植え込みの角を回り、ダンゴムシを見つけお花を見つけて摘み、「あっ、お母さんは?」と思い出して、お花を摘んだ所を通りダンゴムシにさよならを言い、お母さんを見つける、そんな日常生活の中の遊びも一人で行きし帰りしの冒険なのです。

 

こんな体験が一人でやった満足感になり、小さな成功体験を積むことがその子を「うん、ぼくだよ」「あたしよ」という存在の確かさを自分の中に培っていくでしょう。絵本の中にはそんな日常の冒険を描いたものがたくさんあります、  絵本を一緒に楽しむことでお子さんと一緒に小さな冒険の旅に出かけませんか?

 

 

小さな女の子の日常の冒険を描いた作品に「はじめてのおつかい」があります。町の様子も看板も日頃の生活の中で子どもが目にしているだろうと思われるものが丁寧にかきこまれており、みいちゃんの表情、心の動きを伝える文章が丁寧に綴られています。今のお母さんなら、ご自身の子どものころに読んでもらったのでは・・・。みいちゃんは「お母さんに牛乳を買ってきて、ひとりで行けるかしら?」と頼まれて、「うん、行くよ」と答えて出かけます。冒険の条件として、 自分で、「よし!」と決断することが大切です。そして、お母さんと一緒に行ったことのあるお店に行くのですが・・・。みいちゃんにとっては大冒険です。

 

ちょっと違和感があるのは、描かれている時代が今よりもずいぶん前の様子なので、あたしなどには懐かしいのですが、お若いみなさにはどうでしょうか?

 

はじめてのおつかい  筒井頼子作 林明子絵   福音館書店

 

 

プロフィール

うえおか 裕

公益財団法人 ラボ国際交流センター会員・ラボ教育センター関西支部テューター

御所南小学校コミュニティ委員

 

1993年より中京区でラボパーティを主催、2歳から大学生までの子ども達と物語の世界を楽しみ、外国語や日本語で劇として再表現する活動を展開

同時に、児童館や市内小学校にておはなし会の活動も。


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