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「どのくらいの安全?」 田中郁恵

高野川

私の住んでいる場所のすぐそばには高野川という、出町柳で鴨川と合流する川があるのですが、そこの風景がとても気に入っています。

 

土手はわりと急勾配、さらにそのすぐ上には遊歩道があります。つまり川との距離が近いのです。けれど落下防止の柵などはとくに設置されていない。風景としては何も遮る物がなくて気持ちが良いなあと思うのです。(実際には見た目の理由ではなく川が増水(氾濫)したときにかえって柵があると危険だからとかそういう理由もあるのかもしれませんが。)

 

別に川に限らず、あちらこちら「危険だ」と少しでも思われるところには柵や手摺がつくこの頃です。もちろん安全は大事。ただ、なにごともバランスなのではないのかなあと思いますし、柵をつけておけばとりあえず安全、というのもちょっと違うような気がします。柵を設置しても乗り越えようとできます。「うっかり」落ちてしまうリスクを減らしたり、「危険だからここから入るな」という目安としての役割はしていると思います。しかし実際には、柵のこっちが絶対安全、向こうは危険、とはっきり線引きできるわけではないはずですし、こうして目に見えるカタチで線引きしてしまったとたんに油断してしまうことはないでしょうか。何げなくもたれかかった柵が壊れていたり、水かさが増えて危ない水域に達していたとしても柵の内側なら大丈夫、と思い込んでしまうかもしれません。例えば山道では、自分の経験や感覚によって危険の程度を推測しながら(まだ小さいお子さんの場合はその経験や感覚が乏しいので、注視してあげるということはやはり必要になるのだろうとは思いますが)気をつけて行動します。親切すぎる柵というのはそういう危険を察知する感覚を鈍らせることもあるのではないだろうかと感じます。

手すり

 

住宅の設計をしているときも、似たような話があります。階段や吹き抜けがある空間の落下防止の手摺や腰壁です。もちろん、「危険でない」ということは前提ですが、お子さんの年齢など(もちろん大人の高所に対する感覚も)考慮して、どの程度まで安全を考慮するかというのは相談して決めます。

 

例えば、あまり壁などで仕切らない、簡単なバーと支えだけのような手摺。そのような手摺にすると空間に一体感や広がり、抜け感がでます。

 

まだハイハイくらいの小さいお子さんがいらっしゃる場合は目を離すとうっかり落下してしまう危険もありますので、小さいうちはネットをつけるとか、仮設の腰板をつけるとか考えて、大きくなったら外せるようにしておく、とかそんなことも話し合います。いや、やはり危険でこわそうなのでつけたままにしておきたいです。それでしたら仮設ではなくてもう少し、別の案を考えましょう。そんなかんじです。仮設の防止策って、少し大きくなり力が強くなったお子さんにとってはかえって危なかったりしますので。なによりも安全を優先させるならば高めの壁を作って仕切ってしまえば簡単ですが、100%の安全をめざして(そもそも100%というのはないわけですが…)考え出すと豊かな空間がどんどん息苦しくなってしまったり、ふだんの生活そのものも不自由になることさえありますので、そのご家族にとっての安全と空間(生活)の豊かさのバランスのちょうどよい着地点をみつけていきます。

 

それに、これは大丈夫だろうかあれは自分にとって危ないだろうか、いったんあれこれ考えてみる、そのこと自体も大事なことかもしれませんね。

 

 

プロフィール

 

田中 郁恵           HP:http://t-ikue.com/

■経歴

関西大学建築学科卒業後、同大学大学院工学研究科にて都市設計学を専攻。

大学院修了後、京都のアトリエ系の設計事務所にて8年間勤務、主に住宅設計などの仕事に携わり、その後、田中郁恵設計室を主宰。 住まい、店舗、家具、外構、など空間にかかわるデザインをしています。

■資格 一級建築士

 

 


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